ルイージのイタリアンポップス08 シンプルさが命 アル・バーノとロミナ・パワー(Al Bano e Romina Power)

こちらの「LUIGIのイタリアンポップス」シリーズは、イタリアのポップス(カンツォーネ)に詳しく、日本でバンド活動もされていらっしゃるLUIGIさんが、イタリアの60年代に流行したカンツォーネを紹介してくださいます!

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アル・バーノとロミナ・パワー (Al Bano e Romina Power)

1970年から30年ほど活躍した男女デュオ・ボーカルです。

アル・バーノは1965年にソロ歌手でデビュー。

ロミナ・パワーは、往年のイケメン・ハリウッド俳優タイロン・パワーと女優の妻の共同作業による産物、キレイでないわけがない。

ティーンエジャーのロミナがお父さんのお仕事にくっついてイタリアに渡ったら、すかさずアル・バーノが...

(実際はそんな単純な話ではなかったようですが)とにかくアツアツのカップルが一組誕生し、そのまんまのキャラクターでデュオ・ボーカル結成となるし、結婚もするし(後に離婚したようですが)。

お勧めの1曲(デビュー曲ではないけど)Felicità (1982)

彼らの歌は、とにかく親しみやすく馴染みがよい。

シンプルな曲想はポップスの王道かもしれない。

その「シンプルさ」が魅力の題材に、あーだこーだと長々と論ずるのはヤボというもの。

私は書きはじめるといつも長くなるので、今回はシンプルに、

「彼らのポップスは実に素晴らしいです。はい、今回はこれでおしまい!」

とは、やっぱり終われなくて...
私がこのデュオに感じた特徴を「手短に」紹介します。

昔々、ある処に森繁久弥というベテラン俳優が...

「歌は上手すぎちゃいかんのだよ」

と語ったのをおぼえています。

彼は何かと説教たれる爺さんなのですが(あ、炎上しそう)
その言葉には含蓄があります(これでバランスとれたかな?)

「知床旅情」の作詞・作曲を手がけ、自らも歌った森繁氏の言葉です。

誰にでも親しまれ好まれる普遍的なもの、それが大衆のための歌、と考えるなら...

歌は聴くばかりのものではない。皆が歌って楽しむ事もできるもの。
歌うとしたら、「いい曲なんだけど歌うのが難しい」とか、
「歌手が上手すぎて、なぞって歌ってもサマにならない」というように、
人々の心が離れるような歌ではない方が、より良い。...

私は森繁氏の言葉を、そのように解釈しました。
勿論それだけが大衆歌たりうるすべてではなく、あくまでも一つの側面と思いますが...

‘70年代くらいまでのカンツォーネといえば、複雑な転調やら手の込んだメロディの伴奏やら、ドラマチックで壮大な編曲のものが目を引いていました。

そのような中、彼らはサンレモ音楽祭でCi sarà (1984年の優勝曲)の他、幾度も入賞したのですが、それらの曲はどれも実に造りがシンプル

どの曲も作詞・作曲が同じメンバーであるところをみると、このデュオのためのチームだったのではないかと思われます。
濃厚・壮大な歌い上げカンツォーネがひとつの典型ならば、彼らが示したPOPSは好対照な典型といえるように思います。

先述のFelicità (1982)、当時米英でも流行りの電子音アレンジの懐かしい伴奏。ギター弾き的にいうと、和音進行(コード進行)が4パターンくらいしかない。

この曲はキー・コード(主調)がCなので
C-Am―Dm―G7 の繰り返しという、60年代にフォークギターを触ったシニアの人にも懐かしい単純な展開。

そして、歌のメロディの音域が1オクターブ以内に収まっている。
誰にでも楽に歌える音域。難しくない!
さらに、二人で歌っているのだが、ハモっていない。
同じメロディで歌うのだったら誰にでも楽にできる。難しくない!

カラオケで歌うも良し、ギター1本あればその場で伴奏も簡単。
(曲中半音高く転調しますが、まぁ無視しても良いか)

お勧めのもう1曲 Tu soltanto tu (1982)

ロミナのカメラ目線がちょっと濃すぎるけど、それはさておき...
少しテンポダウンのゆったりめ。
そして伴奏のキー・コードや和音進行が見事にFelicitàと同じ。
歌の音域が1オクターブから1音はみ出してるくらいの違い。

どちらの曲も、聴いて楽しむのも良いけど、歌って楽しむのに好適な曲のように感じました。

アイナ講師にお願いして教材代わりにこれら2曲の詞を訳してみましたが、その内容は「幸せ」と感じた事とか「あなたへの想い」をひたすら列挙するという他愛のないもの。

僅かに1、2箇所意味不明のフレーズがあり、

イタリア人の先生に確認しますねー。

とアイナさんが尋ねてみたところ、彼らにとっても意味不明だそうで、そうであれば...
どうせその箇所は誰も解らないのだから、私らが原語でカラオケしても恥をかくことはないと...

そういえば私はバンド遊びは沢山やったけど、カラオケは殆ど行ったことがない。
だいたいカンツォーネのようなマイナーなジャンル(不適切な発言でした)のカラオケなんてあるの?

あるらしいです。今やカラオケは実に多くのジャンルが網羅されているとの事。
正しく私は「井の中の蛙大海を知らず」の典型。もはやKARAOKE は世界の共通語らしい。

ならば、Felicità とか Tu soltanto tu は歌いやすそうだから、そのうち機会があったらイタリア語の練習を兼ねてカラオケに挑戦してみたいな。

おっと、気がつけばそれはかなわぬ望みだった。
だいたい私にはデュオのお相手がいない。カミさんにも相手にされていないし、残念でした。

いやいや。一緒にいつか、デュオしましょうよ!ルイージさん!!

余談

ついでに余談を書いてしまいます。

さて、このように平易さを売りにした彼らの曲は、多くの人々の愛唱歌となっただろうと思われるのですが、ちょっと珍しい特徴に気がつきました。

アル・バーノは声の音域が高く、どの曲も終始ロミナと同じ音程で歌っているのです。ボーカルやってる人などはすぐ気がついたかも。

一般的に男性と女性とでは、歌うときの音域が1オクターブ違う、とされていますから、アル・バーノの音域はちょっとしたものです。

誰かがアル・バーノとロミナ・パワーをカラオケした場合、アルと同じ音域で歌いきれる男性はザラにはいないでしょう。多くの人は1オクターブ低い音域で歌っているはずです。

えっ…。じゃあ、ルイージさん、カラオケ行っても、歌えないんじゃ…???(心の声)

最近のアル・バーノは現役引退を表明してすぐに翻意したり、ロミナと同窓会的デュオを復活して人気を博したりと、変わらず忙しいようです。

現在のロミナさん、アルと同じに恰幅(かっぷく)がよくなって、でも変わらずにお美しいです。

Al Bano Carrisi e Romina Power durante lo show di Raiuno “Buon compleanno… Pippo”, dedicato ai 60 anni di carriera di Pippo Baudo che proprio oggi festeggia 83 anni, Roma, 07 giugno 2019. ANSA/CLAUDIO PERI

ところで、私はよくPOP ITALIANOというサイトを参考にしています。

POP ITALIANO さんのリンクです。

このサイト、とにかく沢山のアーティスト、そしてアルバムを聞き込んでいます。すごいです。
アーティスト・インデックスに紹介されている中で、私が知っているのは、ほんの一握りです。

POP ITALIANOはアル・バーノを

「基本的にここまでやるかというぐらいに歌い上げる歌手」

と評しています。

アル・バーノは本来ソロ・ボーカルで十二分にやれる人だと、私は思います。
ロミナは、うーん...アイドル的癒やし系?歌の巧拙を云々するものではないのかも。

ともあれアルとロミナのデュオ、平易なPOPSに徹したコンセプトは面白いと思います。

この記事を書いた人

LUIGI

あと何年かで6回目の廻り年になる、イタリアのポップス(カンツォーネと呼ばれた)やイタリアンカルチャーファンの爺さんです。

最近、終活を意識するようになり、人生での「やり残し感」を思う事が多くなりました(いっぱいあるけど)。

そんな時、イタリア語会話講座の広告が目にとまりました。

意識の底にイタリアンカルチャーへの関心が残っていたからか?

何か少し近づけるような気がして習い始めました。(学生の頃は勉強が、特に外国語は大の苦手でしたが)

会話を習ううち、イタリアンポップスの歌詞に興味が湧き、アイナ先生にお願いして歌詞の翻訳も習うことになりました。

もう少し詳しい自己紹介はコチラ。興味がある方は覗いてください。

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