これまでの流れ
コンテ首相が辞任・・・!?
1月26日のニュースに、私の頭は真っ白になった。
イタリアの政治事情に精通しているわけではないので、「いきなり」感が半端なかった。
しかし、ニュースをよく読めば、本気で辞める気はなさそうだった。
イタリアには「首相」の他に「大統領」というのがいて、首相の任命権を持っている。
ただし基本的には、日本の天皇が首相を任命するのと同じように、大統領に実質的な任命権があるわけではない。
しかし、今回のように連立与党の一部が離脱して政権維持の目途が立たない場合は、大統領は、自らの主導でその後の対応を模索することになる。
現在のマッタレッラ大統領は、2018年に政局が混迷した際、コンテ氏を首相指名した。
しかし、うまくまとまらず、コンテ氏は首相を辞退。
与党内で協議の結果、マッタレッラ大統領はコンテ氏を再度指名し、第二次コンテ内閣が発足した。
だから、コンテ首相は今回も連立工作をし、もう一度マッタレッラ大統領に指名されるというシナリオだったはずだ。
しかし、2月3日、マッタレッラ大統領に指名されたのは、ドラギ氏だった。
※2020年2月9日現在、ドラギ氏は大統領に首相として指名されたが、まだ議会の正式な承認を待っている段階。
ドラギ氏とは
さて、ここで急に出てきたのがドラギ氏である。
あれ、見たことあるな…。
なになに、EU中央銀行(ECB)の前総裁?
EU中央銀行の前総裁って、イタリア人だったんだ…。
しかも、ユーロ紙幣にこの人のサインが書かれているとは。
毎日、ドラギさんに、お世話になってたのね…。
左上です。このサイン、見えますか?
大学教授のコンテ氏もそうだったが、どうして政治家でない人がいきなり首相になってしまうのか。
日本の政治しか知らない私にとっては、まずそこに驚いてしまう。
そして、顔も名前も、なんだかいかめしいよね…。
Draghi(ドラギ)とは、Drago(ドラゴ=ドラゴン・龍)の複数形。
この人の名言が、2012年のロンドンの会議で言った
「The ECB is ready to do whatever it takes」なのだそうだ。
つまり、「EU中央銀行は、なんでもやるぞ。」
EUという共同体を重視するドラギ氏の主導の元、EU中央銀行は量的緩和を行い、欧州各国の国債を買った。
なぜ、解散総選挙をしないのか?
連立与党が崩れてしまったなら、また選挙してもいいのでは…?
しかし、マッタレッラ大統領は、その余裕はないと繰り返した。
①パンデミックで犠牲者が出続ける最中、また感染者を増やすような行為はできない。
⓶それに、ワクチンの供給も滞ってはいけない。
③しかも、EU復興基金を受け取るために、4月中には復興計画を立てて、EU評議会に提出しなければならないのだ。
今回、ドラギ氏というEU中央銀行の元総裁を新しい首相に指名した背景には、EU復興基金の受け取りをスムーズに進めたいという思惑もあるだろう。
人脈もあるだろうし、とにかく今はイタリアにとって、「財源を得る」ということが最優先事項なのだろう。
そして、EUを重視するというマッタレッラ大統領の意向ともぴったり合致している。
2018年に第一次コンテ内閣を発足できなかったのも、マッタレッラ首相がユーロ懐疑派のパオロサボナ氏が大臣になるのを受け入れなかったためだ。
問われる民主主義
今は選挙をして感染を広めるべきではないというのは、理解できる。
しかし、緊急事態とはいえ、マッタレッラ大統領の権限が大きくなっていくような感じもする。
まあ、大統領がそもそも、民主主義的なやり方で選ばれていることを思えば、いいのかもしれないけど…。
コンテ首相も、コロナ防止策のためにDPCM(首相令)をしょっ中出すことを揶揄されてきた。
今回、コンテ首相率いる連立与党が分裂した背景も、イタリア国民の民意を反映した部分もあるのだろう。
だけど正直私は、「このおじいさんが新しいイタリアの首相か…」と、残念になった気持ちもある。
Times紙では、ドラギ氏の指名を「ヨーロッパを救った銀行家:スーパーマリオ・ドラギがイタリアを救う」と書かれている。
しかし世界では、女性リーダーが活躍する国がコロナ対策にも成果を上げていると言われている。
アメリカでもハリス副大統領が誕生し、新しい時代が来るのかな…と思っていたので、なんだか「73歳のスーパーマリオなドラゴン銀行家」という肩書に、うーんと思った。
この政権が、「EU復興基金を受け取るための短い政権」で終わるのか、それとも意外と大きな変化となるのか…。
イタリアはどこへ行くのか、これからも注目したい。
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