世界は一つになるのか

24歳で移民になった私

私は、24歳で移民になった。

移民と言っても、留学生としてである。

「留学生」というとなんかカッコいいけれど、人間は買い物をして、ご飯を食べて、排泄をして、生きていくという行為に変わりはない。

私もイタリアで、スーパーの買い物袋を両手に持って歩きながら、「私って、イタリアまで来て、何やってんのかな~」って思うことが、何度もあった。

別に、何千キロ移動しようと、やっていることは変わらない。

スーパー行って、料理して、食べて、ウンコして。

どこだって、同じである。

そして留学生であっても、現地の移民局へ行き、滞在許可を取らなくてはならない。

毎年、殺風景な警察の移民局へ行き、威圧的な警察官に見張られながら、アフリカや中国、東ヨーロッパから来た人たちと一緒に何時間も順番待ちをした。

冬でも扉は開きっぱなしで、小さな子供たちが鼻を赤くして何時間も待っているのがかわいそうで、扉を閉めに行った。

すると、警察官が「換気のためだ」と言って、私が閉めた扉をまた開けた。

コロナなど、もちろんなかった頃の話である。

それでも、私がもう一度扉を閉めようとすると、「逮捕するぞ!」と怒鳴られた。

ある中国人は、足を投げ出してベンチに座り、順番を待っていた。

警察官は、彼に「きちんと座れ」と命令した。

中国人の彼は、「どんな座り方をしようと、俺の自由だろう」と言い返した。

警察官は、「お前は、反抗的だ!」と言って、彼の番号札を取り上げた。

こうして、移民は洗礼を受けるのだ。

「移民」って何なの?

留学も、このように「移民」のひとつである。

移民問題とかニュースで喋っているけれど、自分も移民になるのだ。

中国人の移民は、世界中にたくさんいる。

そして、ヨーロッパやアメリカでは、残念ながら、「中国人は自分の国の仕事を奪う、悪い奴」とか思ってる人も、かなりいる。

日本人も、外見から中国人だと思われるので、「移民でていけ」っていう扱いをされることがある。

「どけ!中国人!」って、怖~いおじさんに電車の中で怒鳴られたこともある。

若いイタリア人の男の子の集団に、ゴミを投げられたことも何度かある。

しかし、「移民」とか「難民」って、何なんだろう?

どうして、そんなに「出てけ」扱いをされなきゃならないのか?

国境を超えたら移民なのか?

じゃあ、自分は何人なのか?

それって、どうやって決まったんだろう?

私は、「どけ、中国人!」ってイタリアのおっさんに怒鳴られた時、こう思った。

「この人って、イタリア人のママのケツから産まれてきたことしか、自分の誇れることがないのかな。」って。

イタリア人のママのケツから出たくらいで、「俺様はイタリア人だ!」みたいな。

お前が占領した訳でも、建国した訳でもなかろうにって思ったのである。

私だって、同じだ。

日本人のママのケツから出てきたくらいで、自分は日本人だってアイデンティティーを作っている。

でも、日本人としての「権利」なんて、本当は誰も持ってないはずだ。

だって、私は「日本に対して、何かしたから日本人になれた」っていう訳ではないのだから。

そして、これは確信を持って言えるのだが、いつか、この地球上の国は、一つになると思っている。

Tiktokは誰のものか?

今、Tiktokというアプリをアメリカで使用禁止にするしないというニュースがある。

Tiktokが中国の企業だから、アメリカが反発している。

新聞で、「もうTiktokは中立宣言をするしかない」という意見を述べている記事を読んだ。

「中国の企業だけれども、中国政府にも、アメリカ政府にも、政治的に利用されることを拒否する」という意味の中立である。

そもそも、この企業がどこの国の企業だとか、このネット社会では、もう無意味なのではないだろうか。

GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のようなデジタル産業の企業は、税率の安い国で税金を払っているという。

タックスヘイブンというやつだ。

そんなズルをやめさせようにも、「デジタル」っていう、国境のない活動に国別の税金をかけるというのが、もう無理があるのではないだろうか。

世界最低賃金

話は変わるが、私は日本に帰ってきてから、はじめは病院で働いていた。

仕事内容は、海外のお医者さん留学生のビザを準備することが一つ。

そして、外国人のお医者さんが、日本でも医師として、手術をできるようにするという事が一つだ。

コロナで、「厚生労働省」という言葉をよく聞くようになった。

海外の医師が、日本でも、医師として活動するためには、厚生労働省に色んな書類を提出して、3ヶ月くらいかけて手続きをしなければならなかった。

ヨーロッパの中だったら、まずビザなんてなくても、滞在できる。

そして、こんな手続きをしなくても、普通にお医者さんは、お医者さんとして働ける。

これは、EUという共同体があるからだ。

私のドイツ人の建築家の友達も、イタリアで就職先を探していた。

ドイツで取った「建築家」の資格が、EUの中では、ちゃんと使えるからである。

それでも、例えばドイツとイタリアでは、医療体制が全然違って、コロナの死亡率も、全然違う。

実際、これっておかしいことだと思う。

自分の国の経済状況で、命の重みが変わってしまうなんて、理不尽なことだ。

日本はアビガンを隠している?

ところで、イタリアでは、3月に、コロナに関するすごいデマが流行った。

しかも、日本に関するものである。

「日本は、アビガンっていう特効薬を持ってる。

だから、死者が少ないし、ロックダウンもされてない。

日本人は、特効薬を俺たちに隠しているんだ!」という。

このビデオに対しては、「やっぱり!日本だけ死者が少ないのは、おかしいと思ってた」みたいなコメントがたついていた。

これはとんでもないデマで、本人も後日テレビの取材に答え、謝罪している。

だけど、ここで考えてみて欲しい。

万が一、実際に日本がアビガンを隠していたとして、それって本当に「ずるい」ことだろうか?

薬を独り占めするのを「ずるい」って言うのなら、アフリカの子供たちはどうなるのだろうか?

日本だって、イタリアだって、みんな受けられるすごい簡単なワクチンや薬がないせいで、一体どれだけの子供が死んでいるのか。

人のこと「ずるい」なんて、言う資格、私たちにありますか?

国と国が、平等であるべきって言うなら、アフリカだって、平等であるべきだろう。

ワクチンどころか、食糧だって足りない人たちがいるのに、平等もクソもない。

どうして、医療制度が、隣の国のイタリアとドイツでさえ、共有できなかったのか?

でも、「国」っていうものが、いつかもし、なくなってしまうとしたら?

世界共通のお金ができたら、どうだろう?

例えば、最低賃金が、「京都の最低賃金」とか「東京の最低賃金」じゃなく、「世界の最低賃金」っていう基準ができたら、どうなるだろう?

テレワークや在宅勤務だったら、地域ごとに賃金を分ける意味って、何なのか?

「世界最低賃金」っていうものができたら、きっと、私たちがいま普通に食べてるものも、着てるものも、ものすごく高くなるかも知れない。

でも、自分だけ良ければいいっていう時代は、もう終わりに近づいている。

バナナ共和国

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User TimothyPilgrim on en.wikipedia – Taken by TimothyPilgrim., CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1101389による

ところで、最近トランプ支持者の中で、「我々はバナナ共和国のような、後進国ではない」という言い方がされるそうだ。

バナナ共和国とは、バナナなどの食料品の輸出に頼っている、政情不安の国を差すという。

でも、そのように呼ばれる国がバナナの輸出に頼っているのは、私たちがそんなバナナを買っているからである。

ペルーから来るバナナには、関税がかけられるだろう。

日本の農家を守るため、日本の商品を守るため、あんまり安い野菜や果物を、日本のスーパーで売ったら困るのは理解できる。

でも、冷静に考えて、ペルーから来たバナナが、隣の農家で取れたリンゴより安いなんてこと、ありえるのだろうか?

ペルーって、この地球の裏側ですけど?

運ぶための人件費だって、輸送だって、燃料だってかかっている。

なぜ、こんなに安いのか。

それは、お金の価値が国と国の間で違って、人件費が不当に安く支払われているからではないか。

「世界最低賃金」どころの話ではない。

これは、経済のゲームの話じゃなくて、人権の話である。

私たちは、見て見ぬフリをして、自分にとって価値のあるものを、「お前は貧しい国で暮らしてるんだから、このくらいでいいだろう」って言って、安い値段でたたき買いしているのだ。

そこが歪んでるから、ものの値段が歪んでくる。

国境を取っ払うことで、この世界が共通のお金を持って、本当に平等になろうとするなら、日本にペルーのバナナが並ぶことはないだろう。

多分、もっと近い台湾のバナナが輸入されることはあるかもしれないが、もっと高い値段になる。

でも、近距離の移動で済むので、バナナについてる農薬も減るだろうし、燃料が減るので、二酸化炭素の削減にもなる。

バナナだけを大量に生産すると、農家は台風や災害で、やられるときは一気に全滅してしまう。

それでも、ペルーやフィリピンのバナナ農家は、現金を手に入れるために、私たちのために、バナナを作っている。

この歪んだ経済格差をなくせれば、ペルーでも、自分たちのために、いろんな種類の野菜や果物を育てることができるようになるだろう。

いろんな種類の植物がある方が、災害や病気のときも、どれかは生き残れる。

このような不安定な生産体制が、不安定な政治を生み出しているとしたら、「バナナ共和国」を産み出しているのは、他ならぬ私たちなのだ。

一つになる世界

Official portrait of President Donald J. Trump, Friday, October 6, 2017. (Official White House photo by Shealah Craighead)

By Shealah Craighead – White House, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63768460

コロナ、気候変動、戦争、インターネット。

私たちの世界は、もうとっくに一つになっているのかも知れない。

今回のアメリカの大統領選挙に、世界中が注目した。

別に、アメリカ国民に感情移入した訳でもなんでもない。

これが、他人事ではなく、自分事だからである。

このアメリカの大統領の決定が、我々のコロナ対策にも、気候変動にも、今後の国家間の紛争にも、経済やネット産業にも、大きく影響することを知っているからである。

そして、私たちにも関係するのだから、私たちだって一票くらい投票したいと、全世界の人が思ったのではないだろうか。

もし、私たちが同じ選挙権を持ったら。

その時、私は何人になっているのだろうか?

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