あらすじ
1941年に公開された、1時間32分のラブ(?)コメディー。
「自転車泥棒」や「靴磨き」などの代表作があるヴィットリオ・デ・シーカの監督・主演作品。
小児科医のピエトロは、借金まみれの浮気な2枚目で、仕事もろくにしていない。
その周りにいる3人の女性達と、愛とお金を巡ってドタバタ劇が繰り広げられる。
俳優たちのキャラが立っていて、テンポよく最後まで観られた。
キャスト
ピエトロ・ヴィニャーリ(小児科医)…ヴィットリオ・デ・シーカ
テレーザ・ヴェネルディ(孤児・ピエトロに想いを寄せる)…アドリアーナ・ベネッティ
マッダレーナ・テンティーニ(踊り子・ピエトロの恋人)…アンナ・マニャーニ
リッリ・パッサラックア(富豪の娘・ピエトロの婚約者)…イラセーマ・ディリアン
アントニオ(使用人)…ヴィルジリオ・リエント
アリーチェ(孤児・テレーザのライバル)…ザイラ・ラ・フラッタ
3人の女性
キャストの説明を見ていただければわかる通り、ピエトロの周りには、3人の女性がいる。
この3人の女優さんは、それぞれ有名な女優さんである。
踊り子役のアンナ・マニャーニは、イタリアの国民的女優で、ヴィスコンティの唯一のコメディ映画「ベリッシマ(Bellissima)」にも主演している。
はっきりした顔立ちで、いかにもイタリアの美人女優という感じ。
この映画でも、人によって態度を変えたり、自分勝手なことを言っても、なんだか憎めない。
婚約者役のイラセマ・ディリアンは、他にもデ・シーカのコメディーに多く出演している。
この映画でも、「不思議ちゃん」としていい味を出している。
主人公のテレーザを演じたアドリアーナ・ベネッティは、アレッサンドロ・ブラゼッティ監督の「霧の中の散歩(Quattro passi fra le nuvole)」にも主演している。
この映画では、芯が強くて真っ直ぐな少女を好演している。
また、テレーザのライバルのアリーチェも、密かにピエトロに想いを寄せているように見える。
彼女も雰囲気のある女優さん(ザイラ・ラ・フラッタ)で、デ・シーカ の「子供たちは見ている(I Bambini Ci Guardano)」にも出演している。
アントニオ(ヴィルジリオ・リエント)
この映画で一番気になったのが、使用人のアントニオだ。
昔は馬の世話をしていたという彼が、慣れない使用人としてピエトロのお世話をする。
彼の演技は素晴らしく、ユーモアに溢れていて、笑えるだけでなく、温かい気持ちにさせてくれる。
しかし、気になったのが彼の言葉だ。
なんだか、聞いたことのない方言だと思い調べてみると、彼独自が編み出した「方言」だという。
例えば、定冠詞の la や lo を lu と言ったりする。
そんな方言は実際にはどこにも存在しないが、彼はイタリアで初めて劇場用の「言語」を発明した人として知られる。
これにより、イタリアの地方を公演で巡回するときも、どこの地方でも分かる「なんちゃって方言」として使えたという。
イタリアは地域ごとに別の言葉を話していると言われるくらい、方言が強い。
本当の方言で話せば、観客は全く理解ができないので、この「なんちゃって方言」が役に立ったのだ。
彼の他の代表作には「パンと恋と夢」などがあり、1936-1959の20年余りの間に、108本の映画作品に出演している。
舞台芸術家の息子として生まれ、9歳の時にステージデビューした。
舞台と映画、演劇に生きた俳優だったのだろう。
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